ピチカート・ファイヴから野宮真貴、そしてヒャダインへ 2/3
1996年の「ベイビィ・ポータブル・ロック」は、小西康陽さんならではの洗練されたポップスでした。
おしゃれで、軽やかで、少し気取っていて、それでいて遊び心にあふれている。
あのセンスは、やっぱり唯一無二だと思います。
そんな曲を、2012年にヒャダインがプロデュースし、野宮真貴さんが改めて歌いました。

私はこの頃のヒャダインが、大好きです。
ヒャダイン版「ベイビィ・ポータブル・ロック」のイントロは、8bitゲームを思わせるピコピコした電子音。
そのまま聴いていると、「カカカタ☆カタオモイ」へ、そのまま続いてもおかしくない世界観が広がります。
そして、いつもは渋谷系の野宮真貴さんが、少しだけアキシブな空気をまとって現れる。
私には、その音が「アンナ・カリーナが大阪に降り立った」ように感じられました。
フレンチシックなアイコンが、ネオンの街でゲームセンターやライブハウスを楽しんでいるような、不思議な高揚感があるのです。
途中では、ピチカート・ファイヴではおなじみの
“A new stereophonic sound spectacular.”
というフレーズも、ヒャダインのナレーションで飛び出します。
そこには、ピチカート・ファイヴへの深いリスペクトが感じられて、思わず笑ってしまいます。
90年代の渋谷系を、そのまま保存するのではなく、ゲーム音楽やネットカルチャーを通ってきた世代が、遊び直した作品のよう。
ヒャダインは、もともとピチカート・ファイヴの大ファンだったそうです。
このレコーディングでは、憧れだった野宮真貴さんと一緒に音楽を作っていることに感極まり、涙を流したというエピソードも残っています。
だからなのか、この曲からは「仕事だから作りました」という空気はまったく感じません。
ピチカート・ファイヴへの敬意と、野宮真貴さんへの愛情が、遊び心と一緒にぎゅっと詰め込まれています。
私は、このヒャダイン版を聴いて、元の「ベイビィ・ポータブル・ロック」の良さもわかるようになったのでした。






