駅メモ!が記録してくれた、私の移動と記憶
駅メモ!を始めたのは、2016年熊本地震のあとでした。
熊本市電は止まっている。
子どもも学校が長期休みになっている。
それまで当たり前だった日常が、いったん止まっていました。
そんなとき、なんとなく「新しいものを取り入れてみようかな」と思って始めたのが、駅メモ!でした。
実在する日本全国の鉄道駅を巡る、位置情報ゲームです。

現実では市電が止まっているのに、その頃の私はスマートフォンの中で全国の駅を巡ることにした。
なんとも妙なタイミングです。
軽い気持ちでした。
ところが、遊んでいるうちに、すっかり夢中になっていきました。
「移動と記憶」という価値観の完全な一致
駅メモ!の本質は、全駅制覇でも、キャラクター育成でも、スタンプラリーでもありませんでした。
少なくとも、私にとっては。
駅をひとつ取るたびに、
「ここ、昔行ったな」
「この街で、こんな時間を過ごしたな」
と、自分の記憶が引っ張り出されてくる。
「駅」という場所をフックにして、自分の人生のタイムラインを行ったり来たりしていたのだと思います。
私が集めていたのは、駅だけではありませんでした。
かつて移動した旅の記憶。
その街で過ごした時間。
その頃の自分が見ていた風景。

そういうものまで、一緒に拾い集めていたのです。
普段から記憶の地層を掘り起こしている私にとって、これほど相性のいいソシャゲはありませんでした。
駅や路線に残る、その土地ならではの文化も好きでした。
大きな駅や観光地だけではなく、ローカル線の小さな駅や、そこへ向かう列車、その土地の空気。
そういうものを愛おしいと思う感覚と、駅メモ!の世界は、驚くほどぴったり重なっていました。
うららちゃんと、小田急ロマンスカー
駅メモ!には「でんこ」と呼ばれるキャラクターが登場します。
お気に入りのでんこはたくさんいましたが、うららちゃんに夢中だった頃があります。
うららちゃんは、小田急60000形「MSE」が元ネタとされているでんこ。
その頃、娘が自分のiPhoneに入れていた私の連絡先画像も、ブルーの小田急60000形「MSE」でした。

私が設定したわけではありません。
そして、ファンアートも描いたりしていました。

今思えば、駅メモ!には、そういう小さな記憶がたくさん残っています。
駅メモ!が、もう一度会いに行く理由になった
そして駅メモ!は、実際に私を遠くへ連れ出しました。
久々に、那須の友だちのところまで行ってみよう。
そう決めたのも、駅メモ!のおかげでした。
たくさんの駅を集めたい。
その気持ちも、もちろんありました。
でも、それだけではありません。
一緒に架空のラジオをでっち上げて遊んでいた相方も、家族そろって関東へ居を移していました。
だから、会いたかった。
ゲームの中の「次の駅」が、現実の「次に会いたい人」へつながっていったのです。

せっかく全国の駅を巡るなら、昔からの友だちにも会いに行こう。
そうやって、ゲームが現実の旅の理由にもなっていきました。
夢中になり、同じ時間を旅していた
駅メモ!に熱くなっていた期間は、実はそれほど長くありません。
けれど、その短い期間は、とても楽しい日々でした。
ゲームの中でつながった「電友」と呼ばれる友だちがいて、地方に住んでいる私のところへ来てくれたときには、オフラインでも会っていました。
あいにきてI・NEED・YOU!

私も、関東、関西と電友さんに会いに行きました。
同じゲームをしているというだけではなく、確かに同じ熱量で何かに夢中になり、同じ時間を走っていた。
電友さんたちの逞しい旅を画面越しに見るのも好きでした。
それぞれの生活があって、それぞれの事情があって、それでも次の駅へ進んでいく。
私も、その旅の中にいました。
「何度でも立て直していく」という私の指針と、駅メモの旅路
駅メモ!の旅は、いつも順調だったわけではありません。
電車が遅れる。
ルートを間違える。
予定どおりにいかない。
過酷な暑さにやられる。
それでも、次の駅へ向かう。

今になって思えば、それは私が今大切にしている「何度でも暮らしを立て直していく」という感覚と、とてもよく似ています。
一気に遠くまで行けなくても、今日はひと駅。
明日も、またひと駅。
駅メモ!を遊んでいた頃の私は、そんな旅をゲームの中でしていました。
そして今は、ゲームの中ではなく、現実の生活の中でその続きをやっている。
病気をしたり、環境が変わったり、仕事を変えたり。
思っていた道から外れることもある。
それでも、また次の場所へ進んでいく。
人生も、ずっと各駅停車なのかもしれないな、と思います。
途中で降りることもある。
乗り換えることもある。
しばらく動けなくなることもある。
それでも、また次の駅へ。
そして、私はゲームを降りた
駅メモ!に熱くなっていたのは、ほんのわずかな期間、2年ほどでした。
2018年にやめ、今は、やっていません。
イベントや、でんこの育成。
目まぐるしく変わる数字。
あの頃は、それも含めて楽しかった。
今は熊本の酷暑の中で、新しい仕事を一歩ずつ進めています。
でも、駅名を見れば、その場所にいた自分を思い出す。
路線図を見れば、あの頃の旅が立ち上がる。

そして、あのときの電友の旅も思い出す。
ゲームは終わっても、記憶は残る。
それでいいのだと思います。
美しい思い出だったはずですが…。
約1ヶ月後に…。

















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