2020年2月23日。
会期最終日、私は慌てて熊本市現代美術館へ向かいました。
「ドレス・コード? 着る人たちのゲーム」という、ユニークなファッション展覧会が開催されていたのです。
入口は鏡のようになっていて、まるで「まずはあなた自身を見てください」と問いかけられているようでした。

展覧会のロゴも印象的です。
「?」の文字がハンガーの形になっていて、細かな部分まで「着る人たちのゲーム」というテーマが徹底されています。
会場では、服を単なるファッションとしてではなく、社会との関係性から見つめ直していました。
- 高貴なふるまいをしなければならない?
権力や階級と衣服の関係性。 - 組織のルールを守らなければならない?
制服やドレスコードが持つ同調圧力や帰属意識。 - 生き残りをかけて闘わなければならない?
現代社会におけるファッションを、サバイバルゲームとして捉える視点。
著名ブランドのアーカイブから現代のストリートスナップまで展示は幅広く、どこを見ても見どころばかりでした。
中でも強く印象に残っているのが、COMME des GARÇONSの2018年春夏コレクションのドレスです。

幼い頃から、お姫様の絵として憧れていた高橋真琴さんのイラストが、これまで見たことがないほど大きくプリントされた一着。
この作品だけは撮影が許可されていて、夢のような存在感でした。

一方、撮影できない展示室にも忘れられない作品があります。
1927年のCHANELのドレス。
1965年のYves Saint Laurent《モンドリアン・ルック》のドレス。
写真には残せなかったので、その場で急いでメモを取りました。

そして、問いが、6年経った今になって、以前よりも深く心に響きます。
「今日着ている服、あなたはどうやって選びましたか?」
私は仕事の日、前日の夜に天気予報を見ます。
気温だけではなく湿度も確認し、翌日の仕事内容を思い浮かべながら服を選びます。
歩く時間は長いか。
荷物は重いか。
冷房は強そうか。
そして、誰にも気づかれないような素材や刺繍、縫製の違いも、私には妥協できない大切な要素です。
服は「おしゃれ」だけではありません。
天候との対話。
仕事との対話。
社会との対話。
そして、自分との対話。
毎朝、「今日は何を着よう」と考えることは、小さな意思決定の積み重ねなのだと思います。
だから、この展覧会は服を見るだけのものではありませんでした。
人が、なぜその服を選ぶのか。
その理由を、自分自身に問いかける展覧会でもあったのです。
あれから6年。
ようやく当時のメモを振り返ることができました。
そして今もなお、入口にあったあの問いは、鏡のように私へ返ってきます。
今日着ている服、あなたはどうやって選びましたか?






