再建した胸を、私は3年弱で手放しました。
ちょうど1年前の2025年4月にインプラントを取り出す手術を受けたのです。
あのとき「やってみよう」と思った乳房再建。
その再建について、始まりから終わりまでを、今の自分の視点で記録しておきます。
再建を考えていなかった私
全摘した翌年、2019年終わり。
そもそも私は、再建を考えていませんでした。
保険適用で乳房再建ができることを、乳腺科に貼られていたポスターであらためて知り、「あった方がより質の高い生活になるのかもしれない」と、少しずつ興味を持ち始めました。
やれることは、やってみようか!
形成外科の先生との出会い
通っていた乳腺の病院では再建は行なっておらず、大きな病院の先生が月に数回、相談のために来られるとのこと。
そこで予約を取り、面談を受けました。
担当の先生はとても話しやすく、正直に言うと、乳腺で診てもらっていた先生よりも信頼できると感じました。
科が違うので単純な比較はできませんが、「最初から、この先生に診てもらいたかった」と思ったほどです。
再建に向けて、その先生の所属する大きな病院の形成外科へ通うことになりました。
私の場合は、シリコン製の人工乳腺を胸に挿入し、乳房の再建を行うことになりました。
ティッシュエキスパンダー手術(2020年3月)
2020年3月。
ティッシュエキスパンダーという、皮膚を少しずつ伸ばしていくための拡張器を入れる手術を受けました。

全摘後の右胸は脂肪がなく、皮膚が肋骨に張り付いているような感覚でした。
皮膚に余裕がない状態では、脂肪やシリコンインプラントを入れることはできません。
胸を再建するには、まず皮膚をゆっくりと伸ばしていく必要があります。
そのため、最初に受けたのがこの手術です。
みぞおちあたりから脇にかけての全摘時の縫い跡を開いて、ティッシュエキスパンダーの挿入も、インプラントへの入れ替えも行われました。
あらためて、先生ってすごいなと思います。
あのときは当たり前のように受けていたけれど。
入院生活とコロナの始まり
手術を終え、しばらく入院生活となりました。
喫煙者だった私ですが、先生への信頼がとても大きかったためか、入院中に「タバコ吸いたい!」と強く思うこともなく、ほぼ寝たきりで、ときどき静かに病院の図書室に通って過ごしていました。

軽く読める本を、20冊ほど借りていたと思います。
ちなみに、その図書室で出会って、とても心に残った本(コミックス)があります。
上の画像にもある、岡野雄一さんの「ペコロスの母に会いに行く」です。
退院後、改めて自分でも購入しました。

その頃、世間ではダイヤモンド・プリンセス号のニュースをきっかけに、新型コロナウイルス感染症の話題が広がり始めていました。
病院で過ごすうちに状況は一変します。
志村けんさんの訃報を知ったとき、それまで遠くの出来事だったものが、一気に現実になりました。
家族でさえも院内に入ることができなくなり、着替えなどの受け渡しは、専用のカウンター越しに行われるようになりました。
そんな混乱の中、退院。
エキスパンダー注入と身体の変化
退院後、その形成外科へ定期的に通院し、体内のティッシュエキスパンダーに生理食塩水を注入していきます。
皮膚を少しずつ伸ばしていくための処置なので、やはり違和感や痛みはありました。
ただ、それが「再建のための痛み」だったからなのか、顔を歪めてしまうほどつらいと感じたことはなかったように思います。
ワイヤー入りのブラジャーについても問題ないとのことで、日常生活は特に不自由なく過ごしていました。
半年〜1年ほどかけて皮膚を伸ばしました。
再建延期という想定外
そして、そろそろティッシュエクスパンダーからシリコンインプラントの入れ替え手術が近づいてきた頃。
診察室に入ると、先生が肩を落としていたのです。
インプラントが悪性リンパ腫の発生を理由に、リコールの事態となっていたのでした。
そのため、予定していた手術は延期となりましたが、私はいつでもいいと楽観的でした。
インプラント選びと再手術(2021年6月)
待機していた期間は、体感としてはあっという間でした。
実際には数ヶ月ほどだったのかもしれません。
その後、使用できるインプラントが再び流通するようになり、私は入れ替えの手術へと進むことになります。
実際に入れるシリコンインプラントは、表面の質感や形、容量など、さまざまな種類があります。
「どれがいいですか?」と聞かれても答えられず、最終的には先生にお任せしました。
そして2021年6月。
インプラントの入れ替えのため、再び入院することになりました。
手術は、これまでと同じように淡々と進んでいきます。
手術着に着替え、名前を名乗り、遠くの手術室へ向かう。
いくつかの扉を通り抜け、あの部屋に入る。
魚市場みたいだな、と思う。
横たわるたびに「細いなあ」と感じる手術台。
麻酔が入るといつの間にか意識は遠のき、次に目を覚ましたときには、もう病棟のベッドの上でした。
今回の手術も無事終了したんだね。
再建した胸と、そのときの気持ち
朝の回診は、早ければ8時頃。
先生は、いつ寝てるんだろ。
尋ねることはありませんでしたが、そんなことを不思議に思いながら過ごしていました。
「ようこそ右胸」と思うことはなく。
まだ、漠然としていて、これから生活してみないと何もわからないなと思いました。
*当時は特に注意書きはありませんでしたが、現在は院内撮影は禁止となっているようです。






