
木曜日の夜。
Apple Musicで流れるVENUS PETERの「Every Planets Son」。
イントロがはじまると、私の脳内で、ファッション通信の映像が流れ出しました。
この曲は、番組のテーマソングでした。
ファッション通信は、TV番組で、ちょうどOliveを買いはじめた、1980年代の終わりくらいから夢中で観ていました。
ブラウン管を通して流れるパリやミラノのランウェイの映像。
熊本にいながらにして、誌面ではなく、動くファッションを目の当たりにできる貴重な時間。
そして大内順子さんの唯一無二の語り口。
私は、一度だけ、大内順子さんを見たことがあります。
フランスで。

それは1993年春のこと。
19歳でした。
ニースに到着した初日、ジャン・メドサン通りでの出来事。
この通りは、ニース駅から延びる、一番の大通りです。
ギャルリーラファイエットを出て、横断歩道を渡り、少し歩いていたら、私の視線が何かの空気とぶつかった。
しばらく見ていなかったのだが、あの髪型、あの眼鏡。
大内順子先生であった。
ダークグレーのスーツで、すごくかっこいいというか、「あゝ」となんだか嬉しくなった。
気品にあふれていて、本当に、フランス女性みたいであった。
だから、私が気安く話しかけるようなカンジではなかった、と。

*ギャルリーラファイエット…フランスの百貨店
いい経験しました。
だって、目撃するだけで成立する経験って、なかなかない。
あの日、ジャン・メドサン通りの雑踏の中で大内順子さんが放っていた「空気」を19歳の私は五感で受け止めた。
この南フランス滞在は、あまりお金を使わない、それこそリーズナブルでシックな旅でした。
旅の目的はジェーン・バーキンの音源購入。
当時はレコード、CDというパッケージを見つけるには現地が一番充実していました。

1泊2000円くらい、素泊まりで鍋など調理器具やバストイレがついた安ホテルに宿泊。
そのホテルの窓から見た街並み。
鍵も複数。
全てを使って、部屋にたどり着きます。

捨てる前に、記念にチョコレートの包み紙もスケッチしていたり。
ロンドンのコンランショップで選んだノートブック2冊。
グリーンの方には写真を貼り、赤い方は旅日記を。
どちらも、たくさんの興味深い感想や写真が残っていて、いつ見返しても楽しいです。

ちなみに、ホテル1泊より、ノート1冊の方が高いです。
私の旅にはありがちです。

33年前のニースの海辺。
VENUS PETERの音楽から、南フランスの都市、ニースにぶっ飛んでしまいました。
たった音楽1曲で、懐かしい気持ちに。
そして自分の芯は思っていたよりも、ずっと変わっていませんでした。



