
小学生の頃から、ずっと読み続けている漫画家がいます。
山下和美 。
そして、印象的な建物が出てくる作品が多く、思いつくだけでも、
- 『数寄です!』
- 『スカイブルーへようこそ』
- 『僕の家で眠れ』
- 『ゴーストタウンに星が降る』
- 『寿町美女御殿』
- 『世田谷イチ古い洋館の家主になる』
まだまだあります。
「建物の気配」を描く漫画家
古いアパート。
雑居ビル。
新しい希望に満ちた団地。
米軍ハウス。
数寄屋造りの家が形になっていく過程。
登場人物の「どこに住み、どんな空気を吸って生きているか」が他にないくらい、こちらに届く漫画家なのだと思います。
『摩天楼のバーディー』という物語
最近一気に読み返したのが、『摩天楼のバーディー』。
1990年から1994年まで、雑誌『ヤングユー』で連載されていた作品です。
舞台は、昭和6年にアメリカ人建築家が建てたアールデコの古いアパート。
その最上階、6階に住む便利屋が“バーディー”こと山根トキオ。
まだバブルの残り香のある東京です。
1話読切形式で進む物語の中、バーディーは、ハウスクリーニングをしたり、人探しをしたり、ときには人生の後始末みたいなことまで引き受けます。
バーディーとブラック・ジャック

読み始めた当初から、どうしても彼が、 ブラック・ジャック と重なります。
孤高。
観察眼。
組織に属さない。
どこか世間から距離を置いている。
そして、人間を冷めた目で見ているようでいて、実は深く愛している。
そして、絵津子はどこかピノコに似ています。
無邪気で、自由で、少し騒がしくて。
孤独なバーディーを、現実の側に引き戻すような存在です。
人と関わることで、顔が変わっていく
そして、読み返すたびに思うのですが、バーディーって、だんだん顔が穏やかになっていくのです。
最初の頃はもっと尖っていて、世界との距離を取っているように見えました。
でも、物語が進むにつれ、少しずつ表情がやわらかくなっていくのです。
バーディーにとって、母親の存在そのものだったかもしれない、古く、美しいアパート。
彼は、最後にはその取り壊しを静かに受け入れます。

今の私は、その変化がとても好き。
読んでいるうちに私の中にある、山下和美作品の感覚
小学生の頃から読んでいたから、自分では気づかなかったけれど、私はかなり山下和美作品に影響を受けているのかもしれません。
古い建物が好きなこと。
生活の気配に惹かれること。
少し変わった人に親近感を持つこと。
人を単純に善悪で見ないこと。
そして、作品に登場する多くの建物がずっと脳裏にあって、その影響か、私も物件探しとそこに住むことが好きになりました。
屋根裏、古い下宿、高田馬場駅すぐ。
こんな記事もあります。
パリで見た、バーディーのかけら
1話目でも出てくる、手動の蛇腹式扉エレベーター。
『摩天楼のバーディー』連載開始から間もない頃、初めて行ったパリで泊まったホテルのエレベーターが、まさにそれでした。
「バーディーのアパートと同じだ!」と感動したのを、今でも覚えています。



