小学5年生だった娘と、夏休みに熊本から東京まで車を走らせたことがあります。
ちょうど学校の社会科で「全国地理」を習うタイミングでした。
地図の中にある場所を、自分たちの目で確かめながら進む旅です。
いろんなCDを積み込んで出発しましたが、2人でいちばん盛り上がったのがキノコホテル。
車内は妖しくもポップな「胞子」の空間と化していました。
胞子とは、キノコホテルのファンの呼び方です。

私にとって旅のハイライトは、初めて走った伊勢湾岸自動車道。
目の前いっぱいに広がる青い海。
どこまでも続くような爽快な直線道路。
その景色の中で流れていたのが、『マリアンヌの憂鬱』でした。
美しい、泥濘のようでいて、どこまでも疾走感のある曲が続きます。
景色と音楽がぴたりと重なった瞬間の高揚感は、今でも鮮明に覚えています。
伊勢湾岸道を抜け、途中で立ち寄ったのは刈谷ハイウェイオアシス。
娘の旅の記録に「観覧車や、温泉があった」「てばさき味のスナック菓子がたくさんあった」と残っています。
なんとも微笑ましい記録です。

写真も娘によるもの。
2日間かけてようやく東京にたどり着いたとき、娘がノートに綴ったのは「日本は、とても広い国だと思いました」という言葉でした。

大人になった今。
東京で暮らす今の娘は、この旅をどんなふうに思い出すのでしょう。
私にとっては、あの夏の挑戦そのものが宝物です。
新幹線や飛行機なら、あっという間に着きます。
でも、あえて自分たちの足で、お気に入りの音楽を積み込んで泥臭く進む旅には、その時間ごと持ち帰れるような楽しさがあります。
ツイッギーの映画を教えてくれた那須塩原市の友人も、昨年の夏は車中泊をしながら熊本の我が家まで遊びに来てくれました。
そうでなくっちゃね。
うれしかったー。
話は戻りますが、地理を純粋に楽しむ小学生の娘と、車内ではすっかりマリアンヌ様になりきって歌っていた娘。
そのギャップまで含めて、あの夏の思い出です。
その後、社会人になった娘は、キノコホテルの実演会(ライブ)にも足を運ぶようになりました。
その話を聞いた私は、地団駄を踏みました。
私も行きたい!
…行けばいい。

ハレンチかつエレガント、ディープな女だけの秘密の花園へようこそ。
人工的近未来感覚と昭和元禄的狂騒が絶妙に融合されたヴィザールなロックン・ロールサウンド。
鬼才・マリアンヌ支配人を中心に謎めいた従業員たちが繰り広げる公式ファースト・アルバム、遂に降臨!(キノコホテル『マリアンヌの憂鬱』CD帯より引用)
最近また、通勤中の車で『マリアンヌの憂鬱』を流しています。
香りが一瞬で記憶を呼び起こすように、音楽もまた、その頃の景色や空気、感情まで連れてきてくれます。
また、伊勢湾岸道を運転したい。
ツイッギーの映画については、こちら。






