世の中の美容トレンドは、目まぐるしく変化します。
「新作コスメ」や「パーソナルカラー」なんて言葉が、常にネットの海を飛び交っています。
ハンズなどのバラエティショップでのコスメコーナーも、次から次へと旬の質感やキーワードでいっぱいです。
手元にある、2つのパレット。
2000年代前半に手に入れたもので、とうにお化粧品としての実用的な寿命は終わっています。
どちらも、今実際に使うことはありません。
だけど、トレンドがどれだけ移り変わっても、これらはどうしても処分することができないのです。
プロダクトアートであり、お守りのような存在だから。
マリークヮントのクラシカルな黒にデイジーとサインの刻印。
そしてM・A・Cのエッジの効いた幾何学模様。
ケースが閉じられた状態であっても、そのデザインの主張と完成度は圧倒的です。

2000年代前半といえば、今よりもずっと個々のブランドが独自のカルチャーや強烈な世界観をプロダクトに落とし込んでいた時代だったように思います。
機能性、肌馴染みの良さ、コストパフォーマンスといった優等生な基準だけではなく、持っているだけで「私はこれが好きなの」と表明できるような、ある種の反逆的で自由な空気が、この小さなスクエアの中に閉じ込められています。
開けた瞬間に咲き誇る、黒いデイジー。
マリークヮントのリップパレット「トリクシー ラヴァー」は、花びらの一枚一枚、そして中央の芯の部分に、それぞれ絶妙にニュアンスの違うピンク、鮮やかな赤、そしてヘルシーなオレンジがぎゅっと収められています。

パレットを開くという、ただそれだけの動作で、手の中に花も開く。
このドラマチックな仕掛けには、常に胸がときめきます。
当時は使うのがあまりにももったいなくて、筆先でほんの少しずつ、花びらを傷つけないように大切に色をすくっていました。
もうひとつは、M・A・Cのアイシャドウパレット「ウォーム アイ:6」。
グラフィカルな限定パッケージを開けると、綺麗に底見えしたブラウンやベージュのグラデーションの隣に、ハッとするほど鮮烈なライムグリーンが鎮座しています。
そして、このパレットの最大のニクイ演出は、中にセットされている小さなブラシです。

実はこれ、当時同時発売された限定のメイクブラシセットとお揃い。
ブラシの軸のカラーがパレット内のライムグリーンと完璧に同色(お揃い)で仕上げられているのです。
パレットの中の「色」と、それを塗るための「道具の軸」がリンクしているという、徹底されたデザインの遊び心。
この完璧な連動感に、当時は本当にグッときて、使うたびに至福の満足感を覚えていました。
ライムグリーンやクランベリーを忍ばせるエッジの効いた配色センスは、まさに当時のM・A・Cの独壇場だったと思います。
時代を超えて、私の手元で美しく色褪せないアート。
トレンドは変わります。
けれど、20年以上経った今でも手放せないものがある。
それが、私にとっての「好き」の答えなのだと思います。






