
「がん」と聞いて、真っ先に浮かんだのは“治療費”でした。
命のことより先に、お金の心配が来る。
あれは結構、生々しい感覚です。
子どもの頃から、ドラマの中ではよく「治療費が払えず…」という展開を見てきました。
だから、自分が乳がんと告げられた時も、頭の中ではレジの音みたいに「いくらかかるんだろう」が鳴っていました。
治療費、大きな問題はありませんでした
結果から言うと、治療費そのものについては、高額療養費制度にかなり助けられました。
私は当時、個人事業主で国民健康保険に加入していましたが、抗がん剤治療や手術、入院もすべて保険診療の範囲内。
数十万、数百万といった治療費請求はありません。
そのため自由診療を選ばない限り、「払えなくて治療できない」という状況にはなりませんでした。
病院のケア担当の方にも、「できるだけ費用を抑えたい」と最初に相談していました。
すると、抗がん剤治療の入院スケジュールを同じ月にまとめてくれるなど、制度をうまく使えるよう調整してくださったんです。
病院は“生活”を一緒に考えてくれる場所でもありました。
ただ、収入が途絶えるのはリアルにシビアでした
問題は、むしろこちらでした。
抗がん剤の入院を2〜3回終えた頃には、体力も思考力もかなり削られていました。
「ちょっと横になる」が、そのまま一日になる。
パソコンを開いても、文字が頭に入ってこない。
当時はひとりでECサイトを運営していたので、私が止まると、そのまま仕事も止まります。
つまり、収入がゼロになる。
会社員なら、健康保険組合や協会けんぽの傷病手当金があります。
働けない期間も、ある程度の収入は守られる。
でも、自営業は自由な代わりに、そこはかなりシビアでした。
自分が倒れると、売上も一緒に倒れる。
あれだけゲーム攻略のように追いかけていた売上を、もう両手をあげて降参、考えることすら放棄していました。

当時、それでも無造作に咲き続けた庭のバラ。
共済や保険の盲点
開業したばかりの頃、税務署経由で税理士さんの無料相談を受け、その流れで青色申告会にも入会しました。
その時に勧められたのが「小規模企業共済」。
個人事業主や小規模法人の経営者向けの、積立型の退職金制度です。
掛け金は全額所得控除。
節税にもなる。
今思えば、かなり優秀な制度です。
なのに私は、わりと早い段階でやめてしまいました。
当時は「今のキャッシュフローの方が大事」と思っていたんですよね。
でも、少額でも続けていれば、その後の廃業時にも気持ちの支えになったかもしれない。
それから、がん保険。
月500円くらいの掛け捨てタイプを勧められていた時期があったのに、「まだ大丈夫でしょ」と入らなかった。
しかも当時は、子どもたちを路頭に迷わせないようにと、死亡保障型にかなり寄せていました。
“死んだ後”の備えはしていたのに、“生き延びる途中”の備えが薄かったんです。
もしあの時、診断給付金が出るタイプの保険に入っていたら、少し違っていたのかもしれません。
元気で働ける前提って、思っている以上に強い思い込みだったんだなと、今は感じます。
収入が止まって、考えたこと
私の場合、お金のリスクは「高額な治療費」よりも、「収入が止まること」でした。
だからこそ改めて思うのは、「所属」の強さです。
会社員には傷病手当があり、有給があり、社会保障がある。
もちろん大変さもあるけれど、“働けなくなった時に完全にゼロにならない”という安心感は、想像以上に大きい。
保険って、「絶対必要」か「不要」かの二択ではなくて、
その人の働き方や、背負っているものによって意味が変わるんだなと思います。
ひとり親だったために、生活は私が働くことによって成り立っていました。
そして治療中、思いがけない形で支えてくれる人たちが何度も現れました。
あの時のことは、また別の話として、いつかちゃんと書きたいです。
これは情報提供のみを目的としています。
医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。
乳がん治療の記録をまとめています。



