今の仕事に就く前、短い間でしたが、アパレル販売員として働いていました。
私には接客以外に、もうひとつ好きな仕事がありました。
それが、スタッフコーデの制作です。
スタッフによるコーディネート写真は「今日の私服」と思われることもあるかもしれませんが、私が働いていたブランドでは違いました。
おしゃれ日記ではなく、オンラインでの接客ツールだったのです。
販売経験の長い先輩が、組み合わせを考えてくれていました。
私はそれを着て、撮影し、画像を整え、コメントを書き、申請する担当。
販売員としては新人でしたが、この仕事だけは、以前ひとりでECサイトを運営していた経験を生かせる場面でした。
撮影場所は、華やかなスタジオではありません。
売場の裏にある、お客様が使うことのない薄暗い非常階段。
「ここで撮るんだ!」
最初は少し驚きました。
壁には少し汚れがあり、照明も決して理想的ではありません。
それでも、スマートフォンを三脚にセットし、セルフタイマーを押して撮影。
シャッターが切れるまでの数秒で、手に持ったリモコンをポケットへ滑り込ませたり、見えない角度に隠したり。
ポーズを少し変えながら何枚も撮り、あとでアプリを使って明るさや色味を整え、壁の薄い汚れも自然になじませていきます。
地味な作業ですが、この時間が案外好きでした。
非常階段は、撮影場所であると同時に、小さな想像の入口でもありました。
この服なら江津湖を歩いていそう。
このコーデなら、肥前白石駅で列車を待っているかもしれない。
そんなふうに情景を思い浮かべると、表情も立ち姿も少しだけ自然になる気がしていました。
私は非常階段に立ちながら、毎回どこかへ出かけていたのです。
ECサイトを長く運営していた頃から、一覧に並んだときに「思わずタップしたくなる一枚」を考える癖が身についていました。
だからスタッフコーデでも、
「この角度のほうがシルエットが伝わるかな」
「トップスで覆われているけれど、ウエストの細かい刺繍も伝えたいな」
そんなことを考えながら撮影し、画像を整え、せっせと文章を書いていました。

投稿すると、ランキングや、自分のコーデ経由での購入が目に見えて伸びていくのも嬉しかったです。
特集ページに掲載されたこともあり、自分の工夫がお客様に届いていることを実感できました。
モデルが着用する商品ページは、服そのものを美しく見せる仕事。
一方、スタッフコーデは、お客様が「この服を着た自分」を想像するための仕事です。
似ているようで、役割は少し違います。
「ウエストはゴムだけど、窮屈じゃないかな?」
「パンツ丈は、お直ししなくても履けそうかな?」
そんな、試着ができないお客様の不安を少しでも減らすための材料を届けること。
近い身長であったり、似た体型のスタッフの着用画像は参考になります。
だから、正面だけでは終わりません。
横から、後ろから、歩いたときのシルエットまで。
たくさんの写真を並べて、お客様ができるだけリアルにイメージできるよう工夫していました。
説明文は、あくまでも添えるもの。
主役は写真でした。
販売員の仕事というと、接客やレジの印象が強いかもしれません。
その裏では、非常階段でスマートフォンを三脚に立て、一人で何度もシャッターを切っている人もいます。
お客様のスマホに届く一枚の写真は、そんな地味な積み重ねから生まれていました。
今振り返っても、あの時間は、地味だけれど、とても楽しい仕事でした。
画像は撮影の雰囲気を伝えるためのものです。
商品が特定できないよう加工しています。






